実名のインターネット - 実名・別名・匿名

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以前、「実名のインターネット - 昔話」において、学術利用時代のインターネットとパソコン通信について、ユーザ ID の取扱いが「似たようなもの」だったと書いた。たしかに、ID がネットを利用する権利とリンクしていて、他の名前を騙ることが難しかったという意味においては確かに似ているのだが、学術利用時代のインターネットは実名がベースであり、一方のパソコン通信ではハンドル名、すなわち筆名/芸名モデルを採用していて、決して「似ていた」わけではないのだ。実際、両者の合流の際には、ハンドル名の名乗りを身元不明扱いする (学術利用) インターネット文化と、名前のみならず所属組織も名乗ることを「権威的」と批判するパソコン通信との間で「文化の衝突」が見られたのである。そしてこの衝突そのものが、結局「匿名」というより汎用的かつ無責任な名前に押し流されていくことになる。

これまで、この「実名のインターネット」なる駄文において、実名と別名と匿名の区別がいい加減であった。正確には、この問題について考え始めた当初、名前を実名と匿名にのみ分類しており、別名は基本的に匿名と考えていた。それでいてパソコン通信のハンドル名は実名に準じる取り扱いをするのなど、混乱が見られた。改めて「名前」の分類を試みる。

実名
別名(I)実名とリンクしている別名。本名が明らかとなっている筆名/芸名など
別名(II)実名とリンクしていない別名。ほとんどのブログの筆名がこれにあたる。
匿名実名、別名に該当しない名前。

この分類で、別名を「実名とのリンクの有無」を基準に二つに分けてみた。筆名/芸名モデルに準じた別名を「別名(I)」とし、実名とのリンクがないものを「別名(II)」とした。問題は、この「別名(II)」と匿名の違いである。ともに実名とのリンクがないのが特徴であるが、「別名(II)」は、比較的長期間つかわれる名前で、著作物の公開や私信のやりとりなど、本人の人格 (の一部) を移譲している点が匿名との違いであると考えている。匿名はまさしく匿名としてまったく名乗らない場合が多いが、ごく短期間の同一性を担保するためや (ときに悪意を伴った) 洒落として別名を名乗るときもある。こういった匿名としての別名と、「別名(II)」は、名前の持続性と人格の移譲の有無において区別する物とする。

いまのところ、別名「鴨乃嘴南蛮」は別名(II) にあたる。前回、別名(I) にしない理由の一つについて、隠れ家遊びの楽しみとした。しかし、それだけではないのではないか、と蟠るものがあった。2012年6月26日(火)の NHK クローズアップ現代の「“忘れられる権利”はネット社会を変えるか?」を見て、「蟠るもの」とは"忘れてもらえない恐怖" ではないか、と思うようになった。

「蟠る」は「わだかまる」と読む。おそらく、自分自身が後日読めないだろうと思われるのでメモしておく


作成: 2012-07-01 01:07:25.0更新: 2012-07-05 10:53:38.0
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