米軍用機命名規則の迷宮 〜 F-1

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YF-16 and YF-17 in flight 手前が YF-16。大型化され、とくにレドームが大きくなった F-16と比べてもなんと美しいことか。

私の航空機趣味は、YF-16 のプラモデル作りで開眼し、A-4、RA-5 のプラモデル作りで定着していった。そのころは F 記号と A 記号の違いも知らなかったのだが、徐々にその違いや記号の使い方の歴史的経緯も解ってきた。解ってきたつもりだが、米国の「軍用機命名規則」に対する思い込みがあったり、規則の例外もあったりで「なんでこんな思い違いをしていたのだろう」とか「どうしてこんな例外を認めたのだろう」という「命名規則の迷宮」が形成されている。

軍用機名のハイフンの直前、YF-16 の 'F' とか、RA-5 の 'A' が軍用機の基本任務記号で、F は戦闘機 (Fighter) 、A は攻撃機 (Attacker) になる。ハイフンの直後の番号が設計番号で、YF-16 は米軍において通算16個めの戦闘機、A-4 は4つめの攻撃機である。基本任務記号の前の 'Y' とか 'R' については現状接頭記号で、Y = 試作、R = 偵察で、RA というと攻撃機を改造して偵察用にしたもの、となる。

軍用機なるものが誕生してからおおむね100年が経とうとしている。最初から設計番号を通し番号でふっていれば、戦闘機や爆撃機のように更新の激しい機種では100を越える。実際にそんな大きな番号になっていないのは、番号のふりかた「命名規則」がときおり変わるからである。ちなみに現行の規則は1962年9月の施行で、基本的にはそこからカウントしなおしになっている。この規則では、ばらばらだった陸海空軍の命名規則が統一された。統一にあたっては、おおむね空軍の命名規則が援用された。戦闘機を例に挙げると、F-105 とか F-111 などの既存の空軍戦闘機の設計番号は保持されている。しかし、命名規則体系がかなり異なった海軍戦闘機の記号は大きく変更された。

そもそも海軍は命名規則の体系が空軍系と大きく異なっていた。例えば、グラマンの海軍戦闘機に F9F がある。空軍感覚で読むと「通算9番目の戦闘機の F番目 (=6番目) のサブタイプ」と読み取ってしまうのだが、「グラマン製の9番目の戦闘機」が正解だ。最初の 'F' は戦闘機 (Fighter) だが、9 の次の 'F' がグラマンなのである。なんで 'G' じゃないのかとか不満や疑問が噴出するが、この件に関してはグラマンの前に G を頭文字とするグレートレイクスという航空機製造会社があったからだ。なるべく頭文字になるようにしているらしいけど。さらに、「会社記号」については 'G' がグッドイヤーに使われたり、 'M' がマーチンとGMの両方で使いまわされていたり、複雑怪奇な代物なのだ。もうひとつ、海軍の命名規則で面白いのが、「設計番号 1 は省略する」という規則である。F1J は FJ となるわけで、代数の記述規則を意識しているのだろうか。

このノースアメリカン FJ、1962年9月の命名法変更のおりに海軍に在籍していたのだが、その空軍型はかの有名な F-86 セイバーである。もともとは FJ-1 として直線翼の FJ フューリーが作られた。この時点では直線翼だったのだが、空軍型になる際に後退翼化され、降下時に音速を突破する高性能機となった。この F-86 を再び海軍型にしたのが FJ-2 移行のフューリーである。FJ-4 では胴体を大型化して核搭載能力までつけて、退役寸前ではあるものの現役だったわけだ。新命名規則に移行するにあたり、なるべくもとの番号を反映させようということで、FJ がめでたく F-1 となったのだ。ここまでは迷宮でも何でもない。

そこでなにが迷宮になったかというと、「F-1 は FJ」ではなく「F-1 は F-86」という勘違いをして、それが目出度く定着していたことだ。どうやらF-86 は殊勲機だから名誉職的に '1' を与えられたと思い込んでしまったのだ。勝手な思い込みによる迷宮入りである。

ならば、1962年命名規則の F-一桁の中に空軍機がいるのは少数派ではあっても珍しいことではない。だから F-5 フリーダムファイター/タイガーⅡ がそこに含まれているのは不自然ではないと、これまた思い込んでしまったのが第二の迷宮 F-5 である。


作成: 2014-09-29 22:06:53.0更新: 2014-10-01 19:52:51.0
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