米軍用機命名規則の迷宮 〜 AV-8

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AV-8A Hawker Siddeley Harrier 名機である。インドかブラジルあたりが製造権を取得してそこそこのアップデートをしながら生産を継続すればちゃんと売れるんじゃないだろうか。

米軍機命名規則の迷宮 F-1 と F-5 は見通しの良い田園で思い込みから勝手に迷って迷宮呼ばわりしたのだが、AV-8 の迷宮には同じように迷っている人影をいくつか認めることができる。基本任務記号 A は攻撃で、A-1 から A-6 は吉例にしたがって海軍機を命名しなおしたもので、どれも一癖ありという観点において一騎当千の「つはもの」どもだ。A-7 は米軍用機命名規則が改まった 1962年以降の機体で、海軍の艦上「軽」攻撃機、YA-9 と A-10 は空軍の近接支援機。A-11 は欠番、A-12 はステルス艦上攻撃機を目指したものの、計画中止となった「空飛ぶ直角二等辺三角形」である。

AV-8A ホーカー・シドレー ハリアー については、長いこと LTV A-7 コルセアとノースロップ YA-9 (愛称なし) の間にある「8番目の攻撃機」と思い込んでいた。A-7 の配備が 1967年導入、AV-8A が 1971年、YA-9 が A-10 との競争評価に望んだのが 1972年というから、おおむね年代的にも矛盾はない。そのせいか、「同じ間違い」をしているご同輩も多いのである。実は、AV-8 は8番目の攻撃機ではなく、8番目の垂直/短距離離着陸機 (V/STOL) なのだ。それでは本当の8番目の攻撃機はどうなったかというと、欠番なのである。

飛行機ばかり見ていると、いや、ふつうの離着陸をする固定翼機だけを見ていると気が付かないのだが、米軍命名規則の設計番号の前につく記号のうち、もっとも基本的な分類は「機体種別」なのである。AH-1 は基本任務 'A' (攻撃) と機体種別 'H' (ヘリコプター) を組み合わせたものだ。機体種別には、H=ヘリコプターの他に、V=垂直離着陸機、Q=無人機などがある。ふつうの離着陸をする固定翼機の機体種別記号は「なし」。仮にこの「ふつうの離着陸をする固定翼機」に記号 $ をつけたとすると、ボーイング F$-15A イーグルとか、ロッキード P$-3C オライオンという表記になる。

そんなわけで、AV-8 は「8番目のV/STOL機で、基本任務は攻撃」なのだ。ちなみに、V-7 は DHC のバッファローで 1965年の導入、V-9 はヒューズのチップジェットヘリコプター (え?) で、1964年初飛行。 しかもライアンの 1961年の「人が乗れるゲイラカイト」も XV-8 で一瞬 AV-8 が本当に「8番目のV/STOL機」なのか自信を失いそうになるが、規則変更時には登録抹消だったようで、とりあえず V-8 は欠番になっていたものと思われる。そこに例によって「若い欠番から使う」ルールが適用されて、ハリアーが AV-8 となったのだろう。

A-8 が欠番になった理由は定かでないが、もしかしたら AV-8 との混乱を避けるためだったのかもしれない。X-35 を F-24 にしたら混乱する、と言われても納得できないが、AV-8 と紛らわしいから A-8 を避ける、というのは賢い判断とも思える。


作成: 2014-10-09 20:35:53.0更新: 2014-10-17 02:15:02.0
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