夏への扉(1)

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ハインライン「夏への扉」と山下達郎「Ride on Time」

Robert A. Heinlein の小説「夏への扉」を読んで、「マクセルユアポップス」を思い出した。月曜から金曜日まで、21:30 か 21:45 から始まる15分の帯番組だったように記憶している。もしかしたら番組のフォーマットに変遷があるのかもしれないが、熱心に聴いていた1980年ごろではそのような番組だった。そして、「熱心に聴いていた」には違いないが、むしろ「必死でエアチェック1)」をしていたのであった。

著作物の取り扱がややこしくなった今日では考えられないことではないかと思うが、この番組では、リリース直後の新アルバムをまるごと、ナレーションもかぶせずフェードアウトもさせず、いかにも「録ってください」と言わんばかりに流していたのだ。そんなことしてリスナーのほかに誰が得をするのかと思ってみれば、スポンサーが日立マクセルであるから、カセットテープ2)の売り上げとして各方面に利益が還流したのだろう。

その当時のマクセルのラジオCMで流れていたのは山下達郎「Ride on Time(1980)」。もちろん番組に取り上げられたのでエアチェックで全曲録音した。使ったカセットテープは SONY の HF だったか TDK の AD3) だったか。その点マクセルの思惑通りにはならなかったわけだ。

五輪真弓4)、渡辺真知子などいくつかのアルバムをこの番組でエアチェックし、聴いていたように思う。ナレーションがかぶらないといっても、桑原たけし氏の語りを間を読まないときれいな録音にならないから、「ナレーションカットの術」に磨きをかけることに励んだものだった。

さて、山下達郎の名盤「Ride on Time」には「夏への扉」という曲が収録されている。Heinlein の「夏への扉」の世界を歌ったものだ。小説「夏への扉」は講談社や早川書店から出版されているが、印象的なのが、表紙カバーに猫の後ろ姿と開いた扉が描かれた早川文庫SF版(1979)だ。もしかしたら山下達郎もこの文庫を読んで楽曲の着想を得たのではないだろうか5)

1) 死語か。惜しい言葉を亡くしたものだ。
2) カセットテープ死に絶えていないことは奇跡である。
3) 当時のカセットテープには、磁性体やその粒子形状などによって細かいグレードに分かれていた。SONY HF / TDK AD は下から2番目、音楽用としては一番下のグレードである。高校生の小遣いでは精一杯であった。
4) アルバムは言わずと知れた「恋人よ」。当時は「まらそんびと」に違和感がなかったような気がする。
5) カバーイラストについては、記憶との齟齬がある。

作成: 2015-06-24 16:59:36.0更新: 2015-06-30 17:07:53.0
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