「家畜の勢い」考

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伊藤理佐著「おいピータン」第1巻を読んでいたら、成句の言い間違いギャグがあった。「七転び八起き」を「ななころびはちおき」は本質が変わらないのでそれほどおもしろくはないのだが、「破竹の勢い」を「家畜の勢い」には笑ってしまった。(どのようなシチュエーションで出てきたかは「おいピータン」を読んで下さい。)

私はこの手のギャグが好きである。20年も前のゆうきまさみ著「究極超人あーる」の「昔とった杵柄」「むしり取った衣笠」も大変気に入って日常会話に採り入れている。「家畜の勢い」はひさびさのヒットである。言い間違い成句は、その状況を想像するだけで楽しい。「家畜の勢い」とはどのようなときに用いられるべき「新成句」であろうか。

一瞬、「暴れ馬」とか「暴れ牛」などが思い浮かんだのだが、その状況は「家畜」というより本来従順な動物が何かの拍子に野性の猛々しさを垣間見せる特殊な状況なのであって、「家畜の勢い」ではないだろう。また、(暴れていない)馬が疾走する状況にしても、むしろそれは「悍馬の勢い」なのであって、「家畜の勢い」ではない。家畜と言うからには、「馬」「猟犬」など、特定の家畜の勢いではなく、家畜一般に通用する勢いでなくてはならない。

家畜一般に共通する属性と言うと、「猫」という特殊例を除いて、集団行動があげられるだろう。馬、牛、羊、犬では集団行動をする場面を見たことがある。山羊と豚の集団行動は見た覚えはないがきっと知らないところで集団行動をしているに違いない。「家畜の勢い」とは、家畜集団の勢いと解釈することができそうだ。ひしひしと、あるいはゆっくりと、あるいはやや速足で、集団としてはやや散漫に、使役に耐え、あるいは食用となる運命を甘受しつつ、しかし確実に迫り来る家畜集団。これが「家畜の勢い」なのではないか。

しかし、それにしても「家畜の勢いで仕事をこなす」「連戦連勝、家畜の勢いだ」という用例はなんだかもの悲しかったり不気味だったりする。なかなか見かけることのない状況だ。「家畜の勢い」な状況と遭遇するときが楽しみである。


作成: 2005-10-02 20:42:48.0更新: 2006-07-30 14:16:25.0
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