北の便り他

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北海道に寿郎社という出版社がある。社長の土肥氏はまんが家・西原理恵子氏の元夫の友人で、西原理恵子公式ウェブサイト経由でその出版社のウェブサイトにたどり着き、そこにあった「謎美女モヘジの人生相談」「謎美女モヘジの恋愛相談」からウェブ日記の金字塔「なにがなにやら」を知ることになった。

この寿郎社のウェブサイトで、北大路公子の短篇連作「丸川ヤマオの生涯」の連載が始まった。丸川ヤマオと言えば、「最後のおでん」あとがきの (たぶん) 法螺の登場人物である。第1回は「こんにゃく」「遺伝子」「温泉」の三題噺だそうで、これからもこの形式が続くのだろうか。ひさびさのモヘジ節爆発、モヘジワールドの発動を見た。

しかしながら、「なにがなにやら」読者なら、あるいは「なにがなにやら」の中でなら「おもしろいホラ話」に違いないし、私もどうしてもその文脈で読んでしまうのだ。もしこれが短篇小説だったら、いくらなんでも児玉清のパネルクイズアタック25なんて具体的なテレビ番組名が (いかに長寿番組であろうと) 出てくるのは「時代を写しとった」にしてもどうかと思う。新作落語の短篇としてみても、三題噺のお題のひとつがそのクイズ番組の問題がらみだったり登場人物の持ち物の柄だったりというのは三題噺としてどうか。もしかして三題噺であるというのが法螺なのか。もしかして新境地を開こうとして失敗していないか? もしやあくまで語り部「キミコ」をおいた上でのホラ話として展開するところに作家・北大路公子の真骨頂があるのであって、虚構の世界観を提示するスタイルには向いていないのではないか?

しかし連作であることでもあるので、「丸川ヤマオの生涯」がどう転んでいくかによっては傑作となるかもしれない。期待したい。

さて、寿郎社のウェブサイトにはもうひとつ連載がある。こちらはコラムで、作者は鴨志田穰。西原理恵子の元夫である。以前中断した連載の続きでもあるのだが、鴨志田氏の事情を考えると重いコラムでもある。以前、鴨志田氏の容体についてそう長くないだろう、と書いたことがある (現時点で本ウェブサイトに未収録)。そのころは肝硬変を患いながらもアルコール依存症による飲酒が続いており、自業自得の知れきった死が近いのではないかと思っていた。いわば緩慢な自殺をはかっているように見えていた時期である。しかし先頃、「今度こそ」の断酒に成功し、ああ、うまくいけば娘さんの結婚式まで持つね、よかったね。と思っていたところである。友人・土肥氏への別れの挨拶、義理を果たそうかとも思えるコラムである。

北の便りとは別件で、通勤途中に「金守」というお名前の方の通夜を知らせる看板を目にした。姓ではなくお名前である。御冥福をお祈りするより前に、その名で生きてきた永き日々を偲んでしまった不謹慎をお詫びするとともに、あらためて御冥福をお祈りしたい。よく考えてみれば、金吉・金太など「金」というおめでたい名前を受け継いできた家ではそれほどあんまりな名前でもない。


作成: 2006-12-11 18:14:38.0更新: 2006-12-11 20:40:33.0
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