現代ロシアを読み解く

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現代ロシアを読み解く―社会主義から「中世社会」へ

袴田茂樹/[著] 700円

この本を手にとったのは、「他人の不幸は蜜の味」−不況、犯罪の多発など惨めな状況にある日本、それよりも惨めな状況にあるロシアの現状を知って束の間の安らぎを得たいという不謹慎な動機であった。

本書ではロシアの現状、「正直に法を守るものはバカを見る」社会がロシア近代史−帝政末期から、ソビエト時代、その崩壊に至る過程において若干変容しつつも受け継がれてきたことを指摘している。第3章 「中世ロシア」というタイトルと、その扉に掲げられた帝政期のカリカチュアと現在の写真は、作者の指摘どおり現代ロシアが実は中世にあることを端的に物語っている。

本書はたしかに相互信頼関係の成立し得ない現代ロシア社会の悲哀を描写しているが、翻って日本の現状を考えると、なかなかうすら寒いものを感じざるを得ない。

日本社会は著者の指摘のとおり、封建時代を経験し、市民が自己規制を身につけ、相互信頼による市場経済の成立している社会である。…といっていいのか。現在では「社会であった」と過去形にしたほうがよいのではないのだろうか。

すなわち、日本は封建時代を経験し、市民が自己抑制を身につけ、相互信頼により市場経済を発展させた国であったが、第二次世界大戦の敗北を契機に、封建道徳を捨て去った。戦後しばらく市場経済が機能したのは封建的な道徳の残滓による。欧米は20世紀に封建道徳を捨て去ったかのように見えたが、キリスト教という道徳の中核を捨てなかったのに対し、日本はすべてを捨て去った。封建時代の経験を自ら放棄したのである。

封建時代の経験を放棄した国は、封建時代を経験しなかった国−ロシアと同じ道をたどるのではないだろうか。法を守るものがバカを見る社会の到来である。昨今の犯罪の増加・凶悪化は日本のロシア化を物語るのではないだろうか。

もちろん、封建道徳への回帰は望まない。女性差別、目上の者 (親や上司) への盲目的服従、など封建道徳に現代になじまない要素も多い。しかし、封建道徳にかわる新しい道徳を形成するか、封建道徳の時代にそぐわない部分を除いた現代の道徳が必要とされているのではないだろうか。


作成: 2003-11-20 11:43:47.0更新: 2003-11-20 11:43:47.0
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