家畜の戦い (1)

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キッチンシンク局地戦

私は独身時代を「食器は食べる前に洗う」主義で通してきた。したがって、調理をしながら前の食事の食器を片付ける。ただし、この方法には致命的な欠陥がある。「ものすごく腹が減ってインスタント食品を使用する場合、片付ける時間がなくなる」「ものすごく腹が減っている場合、片付けを省略して調理を展開し、絶望的な混乱に陥る」などである。

幸い、妻は「食器は食後に洗う」主義であったので、結婚後はこれらの混乱とキッチンシンクの惨状には無縁な生活を送れるものと思っていた。しかし、妻の「食後」は極めて該当範囲が広く、「次の食事の食後」「次の次の食事の食後」どころか、「{次の}の n乗 (n は十分に大きい数) の食事の食後」というものなので、これと私の「ものすごく腹が減っている場合」が重なると夫婦ともどもキッチンシンクを見向きもしなくなり、当然のことながら惨状が展開されるのである。

あまりの惨状に、ついに私は「食前食器洗浄主義」を破棄し、「食間食器洗浄主義」に転ずることにした。食間とは、薬の飲み方でしばしば食中と勘違いされるあの食間である。決して食後でないあたりにもと食前食器洗浄主義者の意地と妥協を認めてほしい。

食間食器洗浄主義に転換するにあたり、キッチンシンクを片付けた。これが家畜の戦いの始まりを告げる烽火であった。2005年も11月になりなんとするころのことである。


作成: 2005-11-14 11:15:51.0更新: 2006-07-30 13:20:15.0
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