ハカイダーへの道

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石森章太郎 (故人に失礼ではあるが、石ノ森章太郎よりもこの旧いペンネームの方に親しみがあるのでこちらを使わせていただく) は1960年代に生まれた人間には多くの影響を及ぼした作家 (マンガ家) である。「脳と機械の結合」というセンス・オブ・ワンダーを提示した作品やそれを映像化した作品は彼以前にもあったのかもしれないが、脳とロボットといえば真っ先に思い浮かぶのは「人造人間キカイダー」に登場したハカイダーであり、あるいは「サイボーグ009」に登場した 0012 やブラック・ゴースト首領である。石森章太郎は「透明容器の中で生きつづける脳」をしばしば描いた作家であった。

asahi.comの「サルの脳でロボット動く 科学技術振興機構」という記事のタイトルをみたとき、「いや、それはないはず」と思いつつも、やはり真っ先に思い浮かべたのは透明な容器に収容された脳を頭部に戴く異形のアンドロイド、ハカイダーであった。

ハカイダーのように摘出された脳を使った実験ではありえない、とは思ったのが、タイトルを見た時点では頭部を切開したサルを使った可能性はある、と思っていた。脳は神経の塊であり、神経繊維での情報伝達では電位の変化がある。それを検知する手っ取り早くて確実な方法はプローブ (探査針) をうち込む方法なのだ。この方法では外科手術は必要だし、プローブをしかけた神経は損傷するし、サルにとってはかなり過酷な実験だ。

記事によれば、「ベルトの上を歩くように訓練したサルから脳の電気信号を読み取り」とのことで、このあたりの仕組みはよくわからない。やはりプローブではなかろうか、とは思うのだが、プローブの仕掛け方も進歩してあまり神経を損傷せずに仕掛けられるようになったのかもしれないし、プローブを安定して留置できるなら切開しっ放しである必要もない。運動神経だけを対象にしているのなら痛くもないはずだ。

お猿ハカイダー

それにしても、そのロボットの写真を見て頭部に透明容器に入った脳がないことを確認した瞬間の 99.9% の安堵の他に、思わず 0.1% の「残念」があったのはやはり実現されたハカイダーを見たかったからなんだろうな。

それにしても、ダーク (「人造人間キカイダー」における悪の組織) のハカイダーの開発過程においても、「お猿ハカイダー」はあったんじゃないか、と思うと微笑ましい (動物愛護の観点からは微笑むどころか号泣と激怒だろうであろうが)。作品中に登場する試作型ハカイダーは、「人造人間に人間の脳を搭載してちゃんと生存させられるか」を試験しており、恐ろしいことにその脳はハカイダーをコントロールすることもなくただアンドロイドの頭部に乗っかって生きているだけなのであった。次に登場した実用型ハカイダーでは脳がアンドロイドをコントロールするようになっており、というより脳以外は機械化されたサイボーグに開発過程が進行するのである。当然、人間の脳を使用する前に「サルの脳をアンドロイドに搭載して生存させる」「サルの脳でアンドロイドをコントロールする」研究も行われていただろう。やあ、お猿ハカイダー。あのダーティーだけどクールなハカイダーのイメージ無残。


作成: 2008-01-16 22:33:55.0更新: 2008-01-16 22:33:55.0
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