ケロンの残光

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吉崎観音「ケロロ軍曹」は、そのプロトタイプ「ケロロぐんそー」から数えると10周年だそうだ。これにハマってから5年経つかどうか定かではないが吉崎先生には「おめでとうございます」と感謝の祝詞と同時に「まだ止めないでくださいね」という要望をお伝えしたい。

このプレ10周年を記念して、「ケロンの残光」としてケロロ軍曹雑論三題をお送りする。

「ケロロ軍曹」作品世界の時間の流れ

17巻に収録された137話「戦場は★メリークリスマス」は3巻29話「快打!我輩式贈呈品。」の続編である。奥付によれば、29話は月刊エース・2001年1月号、137話は同じく2008年2月号の収録であるから7年を隔てて続編が書かれたことになる。しかも作品「ケロロ軍曹」においてこのような時系列処理は珍しくないのだ。吉崎観音は「まんがの登場人物は年齢をとらない」問題に対して独自の回答を提出しようとしているではないか。

「まんがの登場人物は年齢をとらない」問題は深刻でありかつ無視されがちな問題である。「まんがだから」と最初から開き直っていればよいのだが、ケロロ軍曹のように最初の一年はついつい登場人物に進学・進級させてしまった、という場合にはなぜ次の春に進級しないのだ、という問題に直面する。 この難問に対する吉崎観音の回答は、驚くべきことに、「ケロロ軍曹」は 2000-2001年に起こったことを描きつづけているのだ、というものなのではないか。作中では、確かに CRT ベースだった iMac は LCD になっている。クルル曹長の愛用する iPod 型通信機も微妙に最新型に更新されているようだ。そのうち iPhone に移行するだろう。しかしながら、基本的には 8年前の物語なのである。したがって、冬樹も夏美も進級する必要はないのだ。それでいながら生活描写は現在のものという、「登場人物は年齢をとらないが、大道具・小道具だけはアップデートされている」スタイルを作り上げているのだ。ケロロ軍曹は永遠の 2000年度の物語なのではないか。

ケロロ軍曹王族説

ケロロ軍曹で現時点でもっともシリアスなエピソードは10〜11巻に収録された 81〜84話「決戦・ケロロ小隊24時」である。このとき敵役をつとめた ガルル中尉はケロロ軍曹の出自に関する重大な秘密の一部を明かしてくれる。「ケロン軍の中でも"隊長の素質"を持つものは限られている」と。さらに、ケロロ軍曹はモアちゃんこと「アンゴル=モア」と極めて親密な関係を持っている。モアの属するアンゴル一族は「星の断罪者」という異名を持ち、宇宙秩序の中でも特別な地位を占めているようだ。しかも、モアはその中でも「王女」であるように思える。王女して「おじさま」として憧れさせるケロロ軍曹とは何ものなのか。

吉崎観音の作品世界とアニメには当然世界観の相違があるはずだ。また、一種のお祭りである「映画版」は原作者の作品構想と隔絶していても不思議はない。吉崎観音作品には映画「超劇場版ケロロ軍曹2/深海のプリンセスであります!」のエピソードは登場していない。しかし、コミックスには収録されていない「描き下ろし超劇場版ケロロ軍曹2 "特別編" /超劇場版ケロロ軍曹2 外伝『あの頃、あの時...』」ではケロンの始祖ではないかと言われているマロンについての言及がある。「これがマロン人の究極侵略形態です/この姿に変身できる『王族の血統』を持つ者を目標の星に送り込むのが彼らの侵略スタイルだったようです」。別の解説役はこれに「なんとなく『キルル』に似てるな...」と付け加える。このケロロランド Vol.13 (1997年4月発行) に掲載されたエピソードが未だにコミックスに収録されないのは何故か。

「あの頃、あの時...」に描かれたマロンの王族の存在、そしてマロンとケロンの連続性、「隊長の素質」、これらを組み合わせるとケロロ軍曹はケロンの「王族」なのではないかという仮説に思い至る。ケロン社会の描写はとくにないので、それが王政なのか民主制なのかその他なのかはわからない。また、ケロロ軍曹及びその「軍曹家」がケロン社会においてどのような地位を持っているのかも不明である。しかしどうみても無能なケロロ軍曹とその小隊が回収もされずに地球に残留し、あまつさえ「侵略権」を維持しているところを見ると、やはりケロロ軍曹はマロン的王族の「素質」を持っているように思えるのである。

その無能にしか見えないケロロ軍曹が「威厳」によって他のケロン人を「威圧」する場面がついに17巻140話「捕捉不可能!?暗殺者襲来!!」で登場した。ケロロ「軍曹」の真の姿だったのかもしれない。宇宙外交官・日向冬樹との威圧合戦が期待される。

「ケロロ軍曹」における侵略とは

ケロンは不思議な種族である。「ケロロ軍曹」世界では「侵略種族」と位置付けられている。もっとも、この世界では「気配種族」なるトンデモない種族までいるので、侵略種族はまだまともな部類なのかもしれない。

侵略種族であるのに、侵略手段として破壊・殺戮は恥ずべきモノとし、他の侵略種族同士の駆け引きもし、「宇宙侵略法」なる法規を遵守して監督する宇宙警察の権限を了承している。さらに地球は「実質的中立惑星」で、これらの制限が複雑に絡む上に長く止まると「心理汚染」が発生するらしい。それでも地球を侵略したがる止むに止まれぬ衝動を持っているようだ。おそらくこの衝動は「侵略種族」一般に共通するのだろうが。

宇宙人全般において、欲しいモノは高度なテクノロジーでいつでも手に入る。とにかくわざわざ侵略してまで欲しいモノはないはずなのだ。あえていうと「本物へのこだわり」はあるらしく、地球産のおもちゃは宇宙的な希少性を持っているらしい... がとにかく侵略の動機は理解不能である。とにかく止むに止まれぬ衝動なのだろう。

しかも、ケロンの侵略が、恐竜の闊歩する時代からそれに挑戦して未だ成し遂げられないのも不思議だ。もしかしたら彼らのいう「侵略」とは「親善」を自動翻訳機が誤訳したのではないか、と思えるくらいだ。

もしかしたら、「侵略種族」としての欲求を満たすため、あえて難しい地球侵略「ゲーム」を、ケロロ小隊を通じて楽しんでいる、というのがケロンの侵略の実態なのかもしれない。


作成: 2008-07-23 22:06:39.0更新: 2008-07-23 22:06:39.0
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