「ネスカフェで暮らす」補遺

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先週の「ネスカフェで暮らす」について、分かりにくい表現だ思いつつそのまま放置したところ、妻から「日本語にすらなっていない」と的確な評を受けた。原文を修正することも考えたのだが、長くなるので別記する。

問題の一文はつぎのとおり。

一瞬「ネスカフェで暮らす」が「ネットカフェで暮らす」または「ネカフェで暮らす」とも見えたが、趣味は悪くても貧乏人なので、趣味の悪い金持ちのように「難民」生活のマネをしたわけではなく、貧乏人とはいえ自宅のローンはなんとか支払っているので路頭に迷ったわけでもなく、ネスカフェなのである。

たしかにひどい悪文である。要約するすれば「『ネスカフェで暮らす』というタイトルをつけたところ、『ネカフェで暮らす』に見えてビックリ。」というなんのことはない話なのだ。そこに金持ちだの趣味の良し悪しだのが入ってきて珍妙な文となっている。

この「金持ちだの趣味の良し悪し」はどうして出てきたかというと、岡部ださく氏の「世界の駄っ作機」がその原典である。それも、すでに6巻を数えている「世界の駄っ作機」シリーズの、ナンバーが振られていない「無印」の初巻に登場している。File No.10 「小さくってもキワモノだい!」で登場ベル XP-77 はアメリカで 1941年に発注された木製戦闘機であった。

この時期には軍用機は金属でつくるのが常識だ。それでも木製で作るとなると、アルミニウムなどの軽金属が手に入らない「非常時」に備えたものになり、ヨーロッパではかなり本機で試作されている。以下は引用。

米陸軍の木製戦闘機はそんな風潮を横目で見ながら、「じゃ、うちもひとつやってみようか」ぐらいの気持ちで始まったもののようだ。だいたい B-17 とか C-47 とか、P-47 とか F6F をあんなにたくさん作れた国が、本当に軽金属が不足すると考えたとは、ちょっと信じられない。フランスやイタリアとはわけが違う。やだね、金持ちは。気が向くとビンボー人のまねをして遊ぶんだから。

てっきり「悪趣味云々」という記述もあったように思ったのだが、これは私の思い違いだったようだ。しかし、金持ちの悪趣味な遊びとして「ビンボー人のまね」をするらしい、という思い込みはこの記事によってもたらされたのである。

「ネスカフェで暮らす」が「ネカフェで暮らす」、すなわちネットカフェで寝泊まりして暮らすという「ネカフェ難民」の暮らしをしているのではないかという疑念に対して、「ビンボー人のまね」をしたわけではないのだよ、と言いたかったのだ。そのときに「ビンボー人のまね」=「金持ちの悪趣味」という等号が極めて私的に成立しているものだから、私以外に通用しない表現になってしまったのだ。

次に、ビンボー人のまねをしたのでなければ本当にビンボーになったのではないか、路頭に迷っているのではないかという疑惑を否定するために「貧乏だがローンはちゃんと支払っていて家を失ったわけではないですよ」と続くのだ。

本来これだけの背景説明が必要な話を説明抜き一人合点満載で書けばそれは理解不能であるに違いない。申し訳ありませんでした。


作成: 2011-01-17 10:19:54.0更新: 2011-01-18 09:47:37.0
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